バンクシーの絵の意味は?人気の風刺画について解説
バンクシーは、公共の場所に描くスタイルや過激な活動で、みる者を驚かせる謎多き人物です。しかし、名前は聞いたことがあっても、絵の意味や評価されている理由について、わからない方も多いのではないでしょうか。
バンクシーとは、現代社会の問題や資本主義に対して感じた批判を、まっすぐに表現するアーティストです。
強いメッセージ性の中にユーモアを含んだ風刺は、多くの方々から共感され、注目を集めています。神出鬼没で、正体を明かさないミステリアスな部分も、ほかのアーティストとは違った魅力です。
今回は、バンクシーの人物像や作品の傾向のほか、人気作品の背景を解説します。作品の本質を理解して、バンクシーの世界観をより楽しみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
バンクシーとはどんな人物?
バンクシーは、イギリスを拠点に活動する、正体不明の現代アーティストです。本名や詳細なプロフィールは不明で、ミステリアスな存在が魅力の一部となっています。
バンクシーのキャリアは1990年代に始まり、ブリストルのストリートで活動を開始しました。神出鬼没で、世界中の壁や公共物などに、まるで落書きのように突如描かれるのが特徴です。
作風は「グラフィティアート」に分類され、主にステンシル(型抜き)を使用し、型板の上からスプレーで描きます。
バンクシーの絵は、社会問題、政治、戦争などに対する痛烈な風刺や皮肉を含んでおり、みる者に強い印象を与える作風です。
そのほか、現地に出向いて作品を仕上げる行動力や派手なパフォーマンスで、みるものを飽きさせません。SNSや報道を利用したプロモーション戦略は、大胆でありつつ巧妙に仕組まれています。
バンクシーの目撃情報
バンクシーが出現するタイミングや場所はランダムであり、突如として現れるため、目撃情報は限られています。
しかし、目撃談の中には、「バンクシーが作品を制作しているところを目撃した」という情報が寄せられているのも事実です。中には「複数人で制作していた」との証言もあり、グループで活動している噂も広まっています。
しかし、いずれもバンクシーは否定も肯定もせず、いまだに正体に繋がる情報や証拠はありません。
バンクシーの作品の傾向
バンクシーの作品は、社会や政治を批判したメッセージ性を含む傾向があります。戦争、環境破壊、権力の乱用、反資本主義などをテーマにし、社会の不公平や矛盾を風刺的に描く作品が中心です。
バンクシーの絵は、痛烈なコンセプトに対し、表現方法にユーモアを感じられる点が魅力です。誰がみても分かりやすく、みた方に思わぬ気づきを与えたり、平和や平等の心を刺激したりする作風を描き続けています。
バンクシーの絵画に高額な値段がついたって本当?
バンクシーの作品は、高額で売買されています。2024年時点で最高額を記録したのは「愛はごみ箱の中に」という作品です。2021年当時の価格で、約28億8千万円(1,858万ポンド)で落札されました。
この作品は、2018年に「風船と少女」として出品され、約1億5千万円で落札されています。落札直後に、額縁に仕込まれたシュレッターによって細断されるパフォーマンスで話題を集め、3年の間で価値が急上昇しました。
そのほか、コロナ禍に発表された「ゲームチェンジャー」は、約25億円の落札価格を記録しています。ウイルスの蔓延によって不安な状況が続く中、医療従事者に感謝の気持ちを込めた作品は、世界中から共感を集めました。
バンクシーの人気作品と各作品の意味を推察
バンクシーの作品は、社会問題や資本主義への批判などを風刺的に表現している点が特徴です。ここでは、バンクシーの人気作品の意味を推察します。
愛はごみ箱の中に
「愛はゴミ箱の中に(Love Is in the Bin)」は「風船と少女(Girl with Balloon)」がオークションで絵の半分を細断された後に、新たにタイトルを付けられた作品です。
商業化するアート市場への批判や、アートが金銭的価値に置き換えられることへの反抗を示しています。愛や価値の象徴が物理的に破壊されることで、“本当に価値のあるものは何か”というメッセージが込められた作品です。
愛は空中に
「愛は空中に」は、イスラエルとパレスチナを分断する壁に描かれ、平和と反戦のメッセージを強く反映しています。
顔をバンダナで隠した若い男性が、手榴弾や火炎瓶などの武器を投げるポーズを取っているのが特徴です。しかし、手に持っているのは武器ではなく、色鮮やかな花束になっています。愛や平和の象徴である花を使うことで、平和的な解決策を訴えた作品です。
風船と少女
「風船と少女」は、2002年から数多く描かれており、赤いハート形の風船に手を伸ばす少女が、印象的に描かれた作品です。2014年に発表された、シリアの少女をモチーフにした作品をきっかけに、反戦や平和の象徴となりました。
赤い風船は、愛や希望を意味し、赤い風船が戦争の地から少女を連れ去る存在として知られています。
ナパーム
「ナパーム(Napalm)」はベトナム戦争の悲惨さと、現代の消費文化を対比させ、反戦と反資本主義の強いメッセージが込められています。
「ナパーム」は、写真家のニック・ウトによって撮影された「戦争の恐怖」から引用された作品です。
資本主義を象徴するアメリカのキャラクターによって、少女が資本主義の世界へ引きずり込まれることを意味しています。戦争の被害に遭った少女と、アメリカ文化のシンボルを描くことで、戦争と消費社会を痛烈に批判しています。
爆弾愛
「爆弾愛(Bomb Hugger)」は、戦争の暴力性と少女の無垢な愛を対比させ、平和の重要性と戦争の無意味さを強調する作品です。
描かれている少女は、爆弾をぬいぐるみのように抱きしめています。少女は無垢や愛を象徴し、爆弾は、戦争や暴力の象徴です。これは、おもちゃのように兵器を作り出す政府を、無垢な少女に例え、子どもっぽさを風刺的に表現しています。
また、「爆弾愛」の絵には、「愛は暴力に打ち勝つ」というメッセージも込められている点が特徴です。少女の純粋な愛が、爆弾を無害なものに変化させる希望を表現しています。
うまくぶら下がる恋人
「うまくぶら下がる恋人(Well-hung lover)」は、恋愛や不倫をユーモラスに表現した作品です。
全裸の男性が窓枠にしがみついて、吊るされている姿が描かれています。この男性は、室内にいる女性の浮気相手であると想像され、みつからないように必死に隠れているのが特徴です。
「うまくぶら下がる恋人」の絵は、愛や裏切りなど、人間関係の複雑さや脆弱さを表現しています。
臭いものにフタをする
「臭いものにフタをする(Sweep it under the carpet)」は、社会や政府が都合の悪い事実や問題を、隠蔽する姿勢を批判した作品です。
作品の中心には、清掃をするメイドの姿が描かれ、カーペットの下にゴミを隠そうとしている瞬間を捉えています。
社会や政府が問題から目を背け、みえない場所に押し込むことで、問題を解決したかのようにみせる風刺的なメッセージです。
ブレグジット
2017年に制作された「ブレグジット(BREXIT)」は、イギリスのEU離脱をテーマにした作品です。
作業服姿の男性が、EUの旗に描かれた12個ある星のうち、ひとつを削り取っているシーンが描かれています。削られた星は、EUから離脱するイギリスを象徴し、削っている星の部分から国旗全体に亀裂が走っているのが特徴です。
イギリスとEUの間に深い分断をもたらすことを示し、この分断が社会、経済、政治に与える影響を強調しています。
退化した議会
「退化した議会(Devolved Parliament)」は、英国議会の退廃と混乱を表現し、政治家たちの行動や議会の機能不全を風刺した作品です。
英国議会とそっくりの場所に、議員たちがチンパンジーとして描かれ、分かりやすく退化した表現となっています。しかし、そんな政治家を選んだのは我々である危機感も、同時に問題視される作品です。
2009年の発表当初は「質問時間」という名前でしたが、EU離脱を巡る混乱に合わせて「退化した議会」へと改名されました。
ゲームチェンジャー
「ゲームチェンジャー(Game changer)」は、コロナウイルスによるパンデミックの中で働く、医療従事者への敬意と感謝を表現した作品です。
絵の中心には少年が描かれ、看護師の人形をスーパーヒーローとして掲げています。その隣には、スパイダーマンやバットマンの人形が、カゴの中に無造作に入れられている点が特徴です。
これは、目にみえないウイルスが蔓延した世界で、命がけで人々を救う医療従事者こそが真のヒーローであることを表現しています。
東京ネズミ
「東京ネズミ(Tokyo rat)」は、2019年に港区の防潮扉に描かれていることが発見され、大きな話題となりました。
ネズミは、バンクシー作品の中で、数多く描かれているモチーフです。ネズミは社会の嫌われ者で迫害される存在である一方、すべての文明を破壊する可能性を象徴しています。
「東京ネズミ」で描かれているネズミは、傘を差し、ボストンバックを持っているのが特徴です。傘とボストンバックは、イギリスの「メアリー・ポピンズ」を彷彿とさせます。飛べないネズミが空高く飛ぶ可能性を示唆し、自由や希望を表現しているとも解釈できる作品です。
くたばるまで買う
「くたばるまで買う(Shop ‘til You Drop)」は、現代社会の過剰な消費主義や、格差社会を批判する作品です。消費者が無制限に買いものを続ける様子を描き、無秩序な消費文化や経済的な不安を強調しています。
作品は、ロンドンの高級ショッピング街にある、ビルの高層部分に描かれました。ヒールを履いた女性とショッピングカートが描かれ、中にはネックレスやシャンパンが入れられています。
実際に壁の絵を見上げると、まるで本当にビルから落ちているような構図が楽しめます。
バレンタインデー
「バレンタインデー(Valentine’s day)」は、愛と破壊の対照的な関係を描いています。
作品には、空に向かってパチンコを打つ少女の姿と、飛び散る赤い花びらが描かれているのが特徴です。
何かを放つ少女は、純粋や無垢を象徴し、破壊された赤い花は愛情を意味します。このコントラストは、バンクシーがよく用いる手法であり、愛が持つ光と影の両面を表現しています。
ロマンチックな愛がときに暴力的な側面を持つことを意味し、愛の裏側にある現実を浮き彫りにした作品です。
今は笑え
「今は笑え(Laugh now)」は、社会的地位の低い若者のメッセージを代弁し、批判を込めて描いた作品です。
人間のように立ち上がった猿が描かれており、首から「今は笑え、いつか俺たちが支配する」と書かれた看板をぶら下げています。このメッセージは、抑圧や不満、社会のヒエラルキー構造に対しての皮肉と、権威への反逆心を示唆しています。
柔道大会
「柔道大会(The Judo Competition)」は、ロシアに対するウクライナの抵抗と、ウクライナの連帯を願うメッセージを表現した作品です。
柔道着を着た子どもが、黒帯の男性を背負い投げしている様子は、大国であるロシアであっても屈しない、ウクライナの象徴です。柔道愛好家のウラジーミル・プーチン大統領を風刺し、ロシアのウクライナ侵攻を痛烈に批判しています。
ハンマーボーイ
「ハンマーボーイ(Hammer Boy)」は、現実にある消火栓を使用し、少年がハンマーを振り上げ消火栓に振り下ろす様子を描いた作品です。
消火栓の上部には、火災報知機に通じるパイプが通っています。まるで遊園地などにある力試しのゲーム「ハイストライカー」で遊んでいるようにもみえるユニークな作風です。
ハンマーを振り上げる姿は、一見、破壊や弾圧的な意味にもみえますが、見方を変えれば平和なワンシーンにも感じられます。“力による制圧ではなく、少年の無垢な心や想像力を大切にするべき”というメッセージが込められた作品です。
羊たちの警報
「羊たちの警報(Sirens of the Lambs)」は、動物愛護や食品業界の残酷さを問う立体作品です。
羊や牛、豚など、60頭にもおよぶ家畜のぬいぐるみが、トラックの荷台に乗せられられています。木板の隙間から頭を出したぬいぐるみからは、鳴き声や木のきしむ音が聞こえ、不穏な雰囲気を演出しているのが特徴です。
見た目は可愛らしいぬいぐるみですが、食肉工場に向かう残酷さを表現しています。
傘少女
「傘少女(Nola)」は、環境問題や自然災害に対する警告を象徴した作品です。
この絵は、2005年8月に発生した、カトリーヌ・ハリケーンから3年後に、ニューオーリンズで描かれました。ニューオーリンズでは、災害から市民を守るために設計されたはずの洪水防御が失敗し、壊滅的な被害を出しています。
少女が持つ傘の中では土砂降りの雨が降っていますが、傘の外に手を出すと雨は降っていません。これは、私たちを守るためにある傘のはずが、実際は傘そのものが雨の原因であったことを意味しています。
まとめ
バンクシーは、現代社会への問題や資本主義などに対して、痛烈な批判を絵で表現するアーティストです。強いメッセージ性の中にユーモアを含んだ風刺は、多くの方々から共感されています。
作品が描かれた背景を理解できると、バンクシーという存在の本質や、絵の価値をより深く楽しめるのではないでしょうか。
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